ビル管理の立場から,ホスピタリティの視点で改修を行いたい
ご依頼者は元ホテルで管理職をされていた方,仮にAさんとしましょう。Aさんは長いホテル運営経験から,系列会社の多目的ホールの経営に移籍されていました。ホテルでは常に相手の感情が動く,ゲストの機微に対応するホスピタリティ精神を培ってき一方で,新しい職場はいわばハコモノの運営。ホール利用を検討する様々な企業に対して,クレームの発生しないようスムースに建物運用をファシリテートすることが求められました。
一方で,Aさんには気がかりなことがありました。建物自体は有名建設会社の手によるもので、非常にクオリティの高いものでしたし,経営もそれなりでしたらから数年前に大規模な内装改修も行われて非常にきれいになっていました。
ただ,それだけだったのです。見かけのきれいさは経営者や運営者にとっては満足感の高いものでしたし,企画会社への営業上もアドバンテージになりました。しかしながら,真にこのホールを利用するゲストからしてみたらどうでしょう。
もちろんホールという建物の特性上,別段建物自体が主役ということはありません。主役はイベントであり,イベントに登壇するアーティストなのです。ホスピタリティ精神を磨かれてきたAさんはそれでも悩み続け,少しでもゲストに快適になるようにと建物を回り続け,イベント開始まで暑さをしのいでいるゲストを見つければミストシャワーを設置し,混雑する入退出時に高齢者が困っているを見つけては即時にバリアフリー化を図ったりと,これまでのホール管理者にはなかった視点での運営を心掛けていました。
時間も、予算もないプロジェクト
そこにわずかですがチャンスが到来しました。わずか数千万円ですが,外構部分の改修費用が捻出できることになったのです。しかしながらすでに時期は初夏,会社の都合で年度内の工事完了を目指して動かなければなりません。そこで,ホテルマン時代にプロジェクトマネジメントで関わりのあったLiteratusにお声がけ頂くこととなりました。
Aさんは元ホテルマンで、かつ改修プロジェクトの担当も経験してきましたので,建築を発注することには手馴れていました。一方で,適切な選定をしなければ,より良い提案が出てこない,工事調整のトラブルが起こる,予算の無駄遣いになるということもよくご理解されていました。ビジョンはある,けどそれを具体化するプロセスがない,時間もない,どのように事業を進めていったらよいだろうか,それがAさんの悩みでした。
ビジョンの明確化とプロセスの構築
まずは手始めにLiteratusとAさんでホールを何度も見て回りました。イベントのある日、ない日,朝,昼,夜…。どのような人たちが,どのように利用されているか,その地域や建物自体の環境など,できる限りの情報を整理してみました。その上で,Aさんの考えるホスピタリティ,そして日頃感じている課題や悩み,逆にこれからの時代に感じる可能性など,何度も何度も議論を重ねました。一方で,事業としての課題,予算や工期,社内承認のプロセスなども整理して,いつまでに何をして,どの時期までに何が決定していなければならないかなどのマイルストーンを整理して,スケジュールの構築をしました。当初からわかっていた話ですが,非常にスケジュールがタイトであることが一番の課題でした。
以上の手続きを踏まえて、プロジェクト化の支援として①事業ビジョンの構築,②事業・工事条件の整理とスケジュールの構築,③役割の選定方法(発注方式)決定の支援,④コンペ主催に関するプロジェクトシミュレーションを提供しました。
コンサルティングの事例
事業前提条件の整理や発注方式の選定方法に関してシミュレーションした資料の一例です。
前述の通り、Aさんは当社とも付き合いが長く,Literatusと共同で改修プロジェクトのマネジメントを実行した経験もありました。
プロジェクトの要件を整理し、様々な可能性の中からたどるべきロードマップを作り上げたら、その先は十分にAさん自身がプロジェクトマネジャーとなって事業を推進する能力を十分に持っています。そこで、このケースの場合、Literatusは
- 適切な推進の確認
- 資料作成の支援
- プロジェクト上の課題に関するスポット支援
- 関係者間でのビジョンの共有
- 意思疎通の齟齬がないか
などをプロジェクトの表舞台に出ることなく、Aさんのメンターとして事業支援を行い、無事、改修計画はオンバジェット、オンスケジュールで遂行することができたのです。