建築のキャリアとマネジメント
Literatusがまだ設立準備期間のことです。私どものもとには、「PMの技術を習得したい」という声が多数頂いていました。ですが、実際に詳細な声をうかがうと、プロジェクトマネジメントというものをしっかりと説明できる人はほとんどいませんでした。
・利益率が高い
・事業の川上から支援できる(早期の受注できる)
・クライアントのお困りごとを解決するパートナー
なんとなくこのようなイメージをしている方が多かったのを覚えています。実際、当時(現在も)体系的に建築分野におけるプロジェクトマネジメントを整理した文献や研究はそれほど多くありません。建築と一口に言っても数百万円の個人住宅から数千億の再開発まで非常に幅広い、しかも同一土地は一つとしてない一品生産のプロジェクトであることが、PMを体系化することを拒んでいる要素だと思っています。
このような経験から、”建築PM教育”がLiteratusの一つの柱になっていくのですが,国家資格でもなければ独占業務も有さない,それを学んだからといってある日当然仕事が取れるようになるわけでもない,そのような技術にどこまで時間とコストをかけて学ぶ人がいるか,という課題もありました。マーケティングを兼ねて,不特定の建設業種にFAXDMを送ってみたり、テストマーケティングをして,市場を調査しましたが反響は思ったより高くありませんでした。
一方ではPMを学びたい人がいて、もう一方ではPMと聞いてもピンとこない人がいる。このギャップをどう埋めて、何を提供していくべきであるか、というのがスタート地点でした。
PMになりたいと考える20代の方と出会う
そのような中,ある若い技術者の相談に乗ることがありました。大学院を卒業して数年の中堅ゼネコン勤務を経て転職を考えているSさんは,プロジェクトマネジャーの業界に足を踏み入れたいと考えていました。
努力も志向も高く好印象な青年に,どうにか望むべく方向にと考える一方で,果たしてまだこの若いキャリアでいきなりPM会社に就職することが果たしてSさんにとって良いのか悩みました。
中堅ゼネコンに数年勤務という経歴は,実際のところ現場の下請管理の経験がほとんどで(資格もまだ勉強中),クライアントと関わることもほとんどありません。彼に考えられる選択肢は以下の通りです。
- 引き続き同業種(建築施工、サブコン等)で専門性を磨く
- 設計事務所やメーカー等類似業種で専門性を磨きつつ、資格取得に励む
- 建築業界で立場を変えた経験をする(発注者、コンサル等)
- 異業種に転職する(建設業界外)
もともとは,PMを学ぶ「タイミング」がある、と思っていましたが、こうして考えてみると、いつでも構わない、むしろどのようにキャリアを伸ばしていくかが大切なのだな、ということに気づきました。
建築業界におけるキャリアが浅く,まだ多様なステークホルダーの立場や事業の仕組みを理解できていない人は事業の仕組みを知ることから始めますが,ある程度技術者としてのキャリアを経てきた人は,自分自身のプロジェクトにおける立場や役割を俯瞰的に見つめなおすことが必要になる。
経験として尖った技術を既に保有していることは,PMとしても強みになります。しかし,時にその強みが,デメリットになることもあります。限りなく主観を排除し,クライアントの事業に寄与することがPMの使命であることを理解する。
技術というのは、例えてみればアプリケーションを追加していくプロセスです。PMになるということは、立場が変わりますので、むしろOS自体を更新、もしくは切り替えるような行為といえるでしょう。
多数の立場の異なるキャリアを有するということは,OSを変更した経験があるということで,そういった意味で非常に柔軟性が高いと言えます。一方で,転職経験があっても同一職種にを転々とした場合は,様々な社風に触れているという経験は残る一方で、専門職に対するこだわりは強くなりますので、OSを切り替えることに非常に抵抗を抱きます。年を取ると「頭が固い」と言われてしまうのは,このような過程に一因があるのではないでしょうか。
Sさんとはたくさんの話をした結果,発注者の立場で建築を経験していくことを選択しました。PMを学ぶことと建築キャリアを考えることは非常に近しい関係にあります。具体的なサービス化はまだ先の話ですが,働き始めの技術者,独立を考える設計士やデザイナー,育休や介護休暇をとる技術者など,さまざまにキャリアを考えるタイミングがあると思います。
キャリアとマネジメント
日本の多くの企業で働き続けると,ある分岐点に遭遇します。そのまま現場で働くか,管理職になるか,です。管理職を選択した人には管理職講習と呼ばれる教育制度によって,はじめてマネジメントを学ぶ機会に恵まれますが,それまではOJTによる部分がほとんどであるため,マネジメント技術の有無というのは本人の素養か,ついた上司の性質に依存してしまうことが多いのです。
現代にあっては,所属する会社の業務に従事する一方で,100年人生時代を生き抜くための力を身に着けることが肝要です。良い会社環境,良い上司に恵まれるという環境的要因は職場の選択によって変更できますが,キャリアの築き方,マネジメント志向というのは意識的に身に着けていかなければ,若い時分にはなかなか機会が与えられないのが現実です。では年齢を重ねればその機会があるか,というと決してそうでもありません。Literatusはキャリアを考える,マネジメントを学ぶ,ための場を用意していきます。マネジメントで金銭を稼ぐことも出来ますが,それ以上に生きるための,キャリアを考えるための一つの力であると思ってください。建築というのは非常に大きなプロジェクトのため,ある一つの立場にコミットしていると,全体がどのように動いているのかに興味関心を抱く,いわゆる「鳥の目」で物事を見ることに不得手になっていきます。
建築技術者としてどうキャリアを積んでいくか
建築技術者には様々なキャリアを持つ方々がいます。Literatus転職サイトやエージェントにはできない,キャリアを考えるということを,多くの人たちと考えていきたいと思っています。建築キャリアを軸としたイベントやセミナーなども開催していきます。また,PROJECT MANAGEMENT platformにて,様々な方の建築キャリアをご紹介していくことで,若い方々に一つの参考としてみて頂ければとも考えていますので,インタビューさせていただける方はLiteratusまでご一報ください。